「チームで働くリモートワーカー」を応援する【リモートワークラボ】がお届けするインタビュー企画。
この企画では、リモートワークを推奨している企業の社長やリモートワーカーに、リモートワークを取り入れている理由、チームが機能する仕組みをお話いただきます。
株式会社spice life 開発部長 五十嵐 邦明氏
大学卒業後、新聞社の画像管理システム開発やSONY製品の映像に関するプログラム開発などを行う。2009年から株式会社万葉にて Ruby on Rails をつかったWebアプリ開発やiPhoneアプリ開発に従事。 2012年より一橋大学非常勤講師を兼任。2013年より株式会社spice life入社。
沖縄からのリモートワークで、普段の5倍のタスクを処理した
では、先程も少しお話に出てきましたが、spice lifeさんのリモートライフ制度について、お聞かせ頂きたいと思います。
- 五十嵐氏
はい。きっかけは、私が花粉症なので「花粉症の間は東京にいるのが嫌です」と立ち話で社長に伝えたのがきっかけでした。立ち話で悩み相談をして、「これ、沖縄とかで2週間とか働けるような制度をつくったら、ほかのエンジニアがすごく羨ましがるから、採用の活動にもいいですよ」と、言葉巧みに制度化しました (笑)
最初にその話を始めたのが2014年の花粉症シーズンで、2015年の花粉症シーズンまでにいろいろ準備をしました。当時はまだリモートで働くノウハウもそれほどなかったので、2週間リモートで働ける「リモート力」を1年間で蓄えて、今年の2月に私が初めて行ってきました。
リモートライフ制度を利用し、沖縄で仕事をする五十嵐氏
制度を活用してすでに沖縄に行かれたのですね!
- 五十嵐氏
はい。2週間沖縄に行きました。その後島根で仕事があったので島根に行って、東京に1週間戻ってきて、その後また2週間、今度は台湾でリモートライフ制度を活用し、仕事をしてきました。
リモートライフの間は、マネジメントの仕事よりは、プログラマーとしての仕事を多めにして、ずっとコードを書いていました。そうしたら、東京にいるときと比べて5倍ぐらいのタスクはこなせたんです。がんがん、どんどんコードを書いて、僕たちのつくっているサービスの改善をどんどんしていったという感じです。
平日はそういうふうに花粉の影響のない場所で1日中働いていたんですけど、週末は、沖縄のときは、船で30分ぐらいのところにある離島に行って観光したり、台湾のときは、台湾の友達に観光スポットを教えてもらって遊びに行ったりもしました。
今はそれが「制度」になっているんですか?
- 五十嵐氏
そうです。
申請して、会社がオッケーを出せば行けるんですね!その制度でリモートライフを過ごす場所は、例えば沖縄だったら「花粉がないから沖縄がいい」と言えると思うんですけれど、どこでも本人が選んだ行きたい場所に行けるのですか?
- 五十嵐氏
そうですね。本人が行きたい場所と、会社がその人を行かせる必要がある場所がマッチすれば、会社命令としてそこに行ってもらう形になります。
なるほど!いい制度ですね~!五十嵐さんは、来年もまた沖縄でのリモートライフをする予定ですか?
- 五十嵐氏
そうですね、ぜひ行きたいです。
リモートライフ制度は、「リフレッシュ」と「たくさん仕事をする」という二点を両立する
沖縄での仕事って、最高ですか(笑)?
- 五十嵐氏
最高に見えるように振る舞ってます、というのがぶっちゃけた話でしょうか(笑)
そうなんですか!?(笑)
- 五十嵐氏
いや、楽しいですよ。すごく楽しいですけど、めっちゃ仕事してます。朝は7時頃から仕事を始めて、沖縄のときは本当に夜も仕事をしていたので、7時からお昼休みを挟んで普通に21時ぐらいまでずっと仕事をしてるので、平日はまさに仕事漬けですね。
沖縄にいるから、集中力が途切れないんですか?
- 五十嵐氏
そうなんですよ。リゾート地に行っているハイな気持ちのまま、「よーし、俺コードを書くぞ」と、すごくテンションが上がった状態で仕事をしているので、実は仕事時間はかなり長いんですよね。だけど、ちょっとお昼を食べに行ったり、スーパーに行って珍しいものが売っていたりすると、写真を撮ってSNSに上げるじゃないですか。そうすると、みんなが「五十嵐は遊んでるんだろう」と思うわけですよね(笑)別にそれで構わなくて、「五十嵐は沖縄に行って楽しく働いているんだな」と思われれば、それでいいんです。
本当はすごく働いているのに(笑)
- 五十嵐氏
ただ、沖縄に行って本当に良かったのは、週末に気軽に旅行できることですね。東京で働いていると、旅行の準備とかしっかりすると思いますけど、「ちょっと 近所のカフェに行こう」ぐらいの感じでいろいろ観光ができるのがすごくいいことでした。あとは、沖縄や台湾のエンジニアと交流ができるということも、とても楽しかったです。リモートライフ制度は、「リフレッシュ」と「たくさん仕事をする」という二点を両立できる、すごくいい方法なんだということが、行ってみて分かりました。
リモートワークツールの効果的な活用法は「情報をみんながアクセスできるところに残す」こと
うまくリモートワークを回すためのアイデアやツールなどを紹介して頂けますか?
- 五十嵐氏
はい。基本的にコミュニケーションはIdobataというチャットツールと、esaというWikiのような情報管理ツールを使い、打ち合わせはGoogleハングアウトでやっています。その3つのうちのどれかを使うようにしています。なぜかと言うと、みんながオープンにアクセスできる場所に情報を置いておいたほうが、リモートで働いている人も共通の情報にアクセスできるからです。
なので、議事録みたいなものもそういうところにちゃんと書くようにしていますし、esaにカテゴリをつくれるんですけど、そのカテゴリに立ち話みたいなカテゴリがあって、会議まではいかないけど、みんなと共有したい会話の内容は、立ち話のカテゴリに残すようにしています。
会議の場ではなくても、大事な会話が生まれることはありますものね。
- 五十嵐氏
そうですね。なので、できるだけオンラインというか、情報をみんながアクセスできるところに残して、みんなで共有できるようにということはやっています。あとは、マイクは大事ですよね。ただ、マイクはまだ正解はよく分からないです。おそらく僕の感触だと1人1人にピンマイクを付けてやったらいいんですけど、 そうするとミキサーとか設備も大掛かりになりそうな気がして、まだ試験の段階です。複数人で打ち合わせしているときのマイクのノウハウはぜひほしいです。誰か教えてほしいです(笑)
今、実施しているのはそのぐらいですね。比較的当たり前のことを当たり前にやっているとしか思っていなくて、ノウハウっていう、銀の弾丸みたいなものはやっぱりないんだろうなと思っています。
オフィスにいないからこそ、「自分はこういう仕事をここまでやったよ」という記録を残したりするんですか?
- 五十嵐氏
エンジニアは基本的にGitHub(*1)のプルリクエストベース(*2)で仕事をしています。プルリクエストは全部残るので、大体誰が何をやっているのかは、そこで分か ります。あとは、ツールでPivotal Trackerというのを使っているのですが、そこにやったタスクなども残すようになっています。ただそれは別にリモートだからというわけではないです ね。会社にいても同じです。
(*1)GitHub=ギットハブは、ソフトウェア開発のためのソースコード共有ツール
(*2)プルリクエストベース=共同でプログラミングをする際、ある開発者のローカルで行われた変更や機能追加を、ほかの開発者のローカルに取り込んでもらうためのリクエストを出す機能のこと。プルリクエストを受けた人は、その変更が適切か否かという判断を下し、適切であった場合は自分のローカルのプログラムを変更することを許可できる。
リモートでは把握しきれない、互いの心を察するための工夫「日報のポエム欄」
先ほどお話にあったesaには、立ち話というカテゴリの他にどういうものがあるんですか?教えていただける範囲で結構なんですけれども。
- 五十嵐氏
いっぱいありますよ。写真を共有したりとか(笑)あとは、仕事用だと、仕様をまとめるのと議事録と日報がほとんどですね。あとは、「社長の独り言」という人気コーナーがあります。ほかのメンバーはみんな日報を書いているんですけど、社長は日報の代わりに今思っていることを「社長の独り言」に書いて、みんなで読むんです。
そこに社員の方はコメントはできるんですか?
- 五十嵐氏
できます。それで「いいね」したりします。あと、社員は日報の最後にポエムという欄がありまして、そこでポエムを詠んだりします。言いたいことを勝手に書く欄です。
皆さんはちゃんと書いてくれています?
- 五十嵐氏
はい。日報のポエム欄は、うちの会社が誇る最高の発明だと思っています!
例えば、どういうことを書いたりします?
- 五十嵐氏
内容は、本当にとりとめのないことから真面目な仕事の話まで書いてあって、うちの猫の写真とか、そういうのもありますし(笑)「最近出たこのゲームが面白い」のような雑談もあります。
あと、「ちょっと今回はこれこれこういう仕事でこうやったんだけど、うまくいかなくって。うーん」とか、「こうやりたいので悩んでいるんだけど」という悩みが書かれていることもあります。そういうときは、僕が解決できそうなことはコメントしたり、直接本人に話したりして、「じゃあ、次からこうやろうか」という感じで良くしていくということをやったりもします。
先ほど、リモートワークだと悩んでいることを察するのは難しいというお話もありましたが、ここのポエム欄が人間の心の部分とかを表現しているのでしょうか?
- 五十嵐氏
そうですね。そういったお互いに気持ちを察するという部分を補っているかもしれませんね。
僕らの働き方の能力を持っていれば、リモートワークの経験を積むだけ」
spice lifeさんでは、リモートワークという働き方を選ぶ自由がありますが、採用の際に「リモートワークをこの人はできるかどうか?」という部分を見極める必要性は出てくるんですか?
- 五十嵐氏
あるかもしれませんね。弊社は今、採用の方法として、リモートワークに近い形で試験をしています。ちょうどこの間新卒の人を採ったんですが、2回ある試験のうち、1回目はGoogleハングアウトでつないで、離れた場所でプログラムを書いてもらいました。こちらも向こうの画面を見ているので、一緒にデバック(*3)したりして、そこでプログラムの力を見させてもらいました。2回目は東京に来てもらって、3日間一緒に働いて、実際に僕たちが現場で使うツールも使ってもらいました。だから、リモートワークができるかどうかを見るのではなく、僕たちのスタイルの仕事の仕方で一緒に働けるかどうか、というところを見ています。
働き方として、リモートワークに移行できるような能力がそもそも必要だということですね。
- 五十嵐氏
そうですね。もう僕らの働き方の能力を持っていれば、リモートへの移行はそんなに大変ではないとは言わないですけど、基礎力はできているので、あとはリモートを実際にやってみて応用力をつけていけばいいだけだと考えています。
なるほど! では、リモートで働ける環境があり、実際に離れた場所から働く社員の方もいて、そんな中でチームとして仕事をしていかなければいけないと思うんですけど、 一体感とか、連帯感を高めるためにしていることは何かありますか?例えば、定期的に集まるイベントがあったりしますか?
- 五十嵐氏
そうですね。月に1回みんなで集まって、夜に会社で飲み会をするTGIFというイベントをやってはいます。あとは、弊社はお花のサービスをつくっているので、ちょうど一昨日、お花農家さんにチームメンバー全員で行ってきました。
SPOTLIGHTSというサービスに役立てるためですね?
- 五十嵐氏
はい。実際にそこの農家さんでお花を摘ませて頂いたり、どうやって栽培しているんだろうと学んだり、農家さんと雑談したりしてきました。僕らは体験を重視していて、やっぱり仕事をするならその仕事に関することをいろいろ体験すべきだと考えています。去年、エンジニア全員でニューヨークとサンフランシスコに行ったんですけれど、そのときもニューヨークのウェブ企業が出しているリアルな店舗を見て、「こういうふうにやってるんだ」と、そういうのを肌で感じてくるツアーをやりました。
すごい遠くまで行ってますね!(笑)じゃあ、リモートの方がいらっしゃっても、特に一体感に欠けているという感覚はなく、チームとしてまとまって仕事ができているんですね!
(*3)デバッグ=プログラムの誤り(バグ)を発見し、修正すること。
会社の成長を促進するような制度をつくりたい
最後なんですけれど、今後spice lifeさんは企業としてどういう方向性を目指していらっしゃるんでしょうか?
- 五十嵐氏
そうですね。いや、もう結構好き勝手やっているので実現しているんですよね。リモートライフもできましたし、リモートでやるのも実現しましたし。
1つだけ、これだけは守りたいと思っているものがあって、そのときどきの状況に合わせて制度をうまく変えていけるという状況にしておきたいんです。そのために、みんなしっかり成果を出してビジネスを育てていくことをずっと心掛けてやっています。今後も会社の成長のペースにちゃんと合わせて、むしろ成長を促進するような制度をつくって、会社をうまく成長させていきたいというのが、今の僕らの会社の目標だと思っています。
いい会社でうらやましいです!今日はたくさんお話を聞かせて頂き、ありがとうございました!
- 五十嵐氏
いえいえ、こちらこそありがとうございました。
株式会社spice life http://spicelife.jp/
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