自宅で働ける在宅勤務は赤ちゃんがいる会社員にとって便利なワークスタイルです。特に日本の子育ては母親中心となるため、在宅勤務に憧れる女性もたくさんいます。しかし、子育てしながらの在宅勤務は想像以上に大変です。赤ちゃんがいる在宅勤務の辛いところや良いところ、会社ができる取り組みについてご紹介します。
相性は最悪かも!?赤ちゃんと在宅勤務
現在、テレワークを導入している企業の中には出産後の女性社員の退職を防ぐために、在宅勤務を認めたケースも少なくありません。子育てしながら仕事ができて便利という声がある一方で、「赤ちゃんがいて家で働くのは無理」と悲鳴をあげる人もたくさんいます。
子育て経験がない上司や同僚からは「通勤する必要がないからオフィス勤務よりラクでしょ」だと誤解されることもあります。確かに在宅勤務だと通勤時間がなくなり、社内の雑務から解放されます。そういう意味では在宅勤務はオフィス勤務よりもラクです。しかし、子育てしながらの在宅勤務は赤ちゃんの世話がゼロになるわけではありません。
ここが辛い!赤ちゃんと一緒の在宅勤務
赤ちゃんを抱えて在宅勤務を経験した人から何に困っているのか、詳しい話を聞いてみました。
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仕事が細切れになる
赤ちゃんの世話に時間がとられるので、仕事をするためのまとまった時間がとれません。赤ちゃんの世話は授乳、おむつの交換、離乳食の準備、寝かしつけなどやることがたくさんあります。1日のスケジュールが分刻みになってしまうこともよくある話。
予想以上に赤ちゃんの世話に時間がとられるため、仕事をする時間が細切れになりがちです。参考までに生後5ヶ月の赤ちゃんがいて在宅勤務をする人の1日のタイムスケジュールをご紹介します。
■生後5ヶ月の赤ちゃんと一緒の在宅勤務
時間 |
作業 |
0:00~3:00 |
睡眠 |
3:00~3:30 |
授乳・オムツ |
3:30~4:30 |
睡眠 |
4:30~5:00 |
授乳 |
5:00~6:00 |
睡眠 |
6:00~8:00 |
朝食・掃除・洗濯・赤ちゃんの遊び相手 |
8:00~9:00 |
授乳・オムツ・赤ちゃんの離乳食 |
9:00~10:00 |
食器洗い・赤ちゃんの遊び相手・仕事 |
10:00~11:00 |
睡眠 |
11:00~11:30 |
授乳・オムツ |
11:30~12:00 |
買い物 |
12:00~14:00 |
昼食・夕飯の支度・赤ちゃんの遊び相手・仕事 |
14:00~15:00 |
睡眠 |
15:00~15:30 |
授乳・オムツ |
15:30~17:00 |
食器洗い・赤ちゃんの遊び相手・仕事 |
17:00~18:00 |
赤ちゃんと一緒にお風呂 |
18:00~20:00 |
授乳・オムツ・夕食・仕事 |
20:00~22:00 |
家事・仕事 |
22:00~0:00 |
睡眠・仕事 |
仕事と育児の切り替えが難しい
在宅勤務だと仕事や赤ちゃんの世話と絶え間なく何かをしている状態です。オフィス勤務とちがってまともな休憩時間はありません。仕事と育児の切り替えが難しく、ONとOFFの差が曖昧になるので、かえって疲れるという声もよく耳にします。
可愛いわが子でも、赤ちゃんのうちは1人の時間がとれなくてストレスでいっぱいになるのはよく聞く話。実際に子育て中の既婚女性は、赤ちゃんの世話でたまったストレスを仕事や同僚との雑談で解消する人も少なくありません。
出産を機に子育てに専念するために退職した人の中には、赤ちゃんの世話が大変すぎてノイローゼになることも。子供の世話をしたくて退職したのに、「子供と離れる時間がほしい」といって赤ちゃんを保育園に預けて復職する人もいます。
ただ子育てするだけでも大変なのに、それに加えて仕事もやるとなると想像を絶する大変さと考えてよいでしょう。
夜しか仕事ができない場合も
赤ちゃんは生後8ヶ月を過ぎたあたりからハイハイ、つかまり立ちなど動き始めるようなります。昼間は赤ちゃんから目が離せなくなるため、仕事をする時間は赤ちゃんが寝る夜しかとれません。睡眠を削って作業時間を捻出するため睡眠不足に陥り、仕事の生産性が落ちて会社が期待する成果を出すことができません。
実際に赤ちゃんを抱えて在宅勤務をする人の話によると、昼間のスキマ時間と夜の作業時間をあわせて2~3時間仕事ができればマシとのことです。また、赤ちゃんにより全く昼寝をしない子や1日中泣きっぱなしの子もいます。そのような場合は1日仕事ができません。
良いこともある!在宅勤務と赤ちゃんのいる生活
ここまでの記事を読むと、赤ちゃんと一緒に在宅勤務は大変なことしかないように思えます。しかし、赤ちゃんと一緒の在宅勤務は悪いことばかりではありません。在宅勤務ならではの良いこともたくさんあります。その一例をご紹介します。
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赤ちゃんの成長を見守れる
いつも家に一緒にいるので、赤ちゃんの成長を常に見守ることができます。たとえば、はじめての寝返りやつかまり立ちなど、子供のはじめての瞬間を目の当たりにできる幸せがあります。子供を保育園に預けて働くと、赤ちゃんとゆっくり過ごせる時間は週末のみ。歩いたり、言葉を発したりなど子供のはじめての瞬間を親が目にする機会は、確実に減ります。
家にいるので赤ちゃんの成長に一喜一憂できるのも在宅勤務ならではの良さ。仕事で疲れたときに可愛いわが子の笑顔に癒やされるという声もたびたび耳にします。
病気のときにすぐ対応できる
赤ちゃんが病気になったときにすぐに対応できるところも在宅勤務ならではのメリット。免疫力のない赤ちゃんはちょっとした気候の変化ですぐ体調を崩してしまいがちです。
子供の熱が37.5℃以上超えると、保育園では預かってもらえません。朝は平熱だったのに昼間熱が上がって、仕事中の親に保育園から呼び出しの電話がかかるのもよくある話です。オフィス勤務だと自分が抜けることで、仕事の引き継ぎやスケジュールの調整などですぐに退社できない場合もあります。勤務途中に頻繁に会社を抜け出すことで、子育て経験のないほかのメンバーから不平不満の声が出ることも。
しかし、必要な連絡やミーティングのとき以外は、1人で仕事ができる在宅勤務なら、赤ちゃんの体調が悪いときもすぐに対応できます。仕事を中断することで他のメンバーに気兼ねする必要もありません。
通勤とお迎えの時間がなくなる
在宅勤務は通勤の必要がないので、その分、家事や仕事、赤ちゃんの世話など時間を有効活用できます。赤ちゃんのいるオフィス勤務者は夫婦のどちらが退社後にお迎えにいくかで揉めるケースも少なくありません。
夫が早く帰りたくても、ほとんどの会社で男性の時短勤務を認めていません。そのため、必然的に時短勤務が可能な母親がお迎えにいく羽目になります。「私も仕事の調整が大変なのに」と、不公平に思う女性の不満の声もよく耳にします。
通勤時間や子供のお迎えのために仕事のスケジュールを調整する必要がないところも、在宅勤務ならではのメリットです。
赤ちゃんがいる在宅勤務者に会社ができること
そもそも、企業が在宅勤務を導入する目的は、長時間勤務をなくして、社員1人ひとりの生産性を上げることです。しかし、赤ちゃんを抱えて在宅勤務をすると、昼間は子供の世話に追われて夜しかまともな作業時間がとれません。そうすると、寝不足に陥り、かえって仕事の生産性が下がります。
赤ちゃんがいる在宅勤務者の負担を減らすために、会社ができる対策をいくつかご紹介します。
自宅以外の勤務を認める
在宅勤務を導入する会社の多くは、自宅以外の勤務場所を認めていません。自宅で仕事をすると子供の世話に時間をとられて、まとまった作業時間が確保できません。カフェ、コワーキングスペースなど自宅以外の場所で勤務ができるよう在宅勤務の制度を変えてあげましょう。
コワーキングスペースの料金の負担
場所にもよりますが首都圏にあるコワーキングスペースの1ヶ月の利用料金は10,000~50,000円程度。この金額を毎月社員が自腹で支払うのはかなりの負担です。特に子育て世帯は住宅ローンの支払いや教育資金と何かとお金が必要です。福利厚生の一環としてコワーキングスペースの利用料金を会社が負担しましょう。
また、在宅勤務者の自宅の近くに低価格でレンタルオフィスを借りるのも1つの手段です。最近は、都市部を中心に安い月額料金で、部屋や席単位で必要な分だけオフィスがレンタルできるサービスもあります。コワーキングスペースの1ヶ月の利用料金より安くなる場合もあるので、そちらも検討してみましょう。
納期に余裕のある仕事を任せる
急な発熱やぐずりなどで赤ちゃんの世話は毎日決まったスケジュール通りできません。納期がタイトな仕事だと、赤ちゃんがいる在宅勤務者は、昼間は作業ができない分、徹夜せざるを得ない状態となります。
また、納期に間に合わなくて会社やクライアントに迷惑をかけることもあるでしょう。社内だけならともかく、クライアントに影響を与えると最悪の場合、会社の機会損失にもつながります。
赤ちゃんのいる在宅勤務者には、納期に余裕のある仕事をお願いする、もしくは納期がない仕事を任せるようにしましょう。そうすることで、在宅勤務者の負担も減るし、会社の業務に支障をきたす心配もありません。
まとめ
一見、赤ちゃんを抱える会社員にとって良いことだらけのように思える在宅勤務。しかし、実際に経験してみると、赤ちゃんの世話に追われて仕事どころではないようです。子供の世話や仕事と常に何かしている状態なので、まともな休憩時間がとれなくて、かえってストレスがたまる人もたくさんいます。また、肝心な生産性も十分に発揮できません。
家庭の問題だからといって、社員1人に労務管理を任せるのではなく、会社でも今回記事で紹介したようなフォローをしてあげるとよいでしょう。
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この記事を書いた人
日野 珠希
フリーのライター。SIerでシステムサポート、制作会社で編集ライター、ベンダーで社内システムの運用業務を経て、今は家で働いています。実務経験を活かしてパソコン、インターネット関連、転職などビジネスマン向けの記事を中心に執筆しております。