前編を読む
性善説が前提のコミュニケーション」
コミュニケーションにおいて、うまくいかないことはありますか?例えば、今、何をやっているのか、どこにいるのかがあんまり分からなくて話しかけられないとか。
- 堂前
それはリモートで働いてた時は言われましたね。「今PCの前にいるのかわからない」みたいな。
なるほど。今でも紺谷さんがリモートの日があると思いますが「何してるか分からないな」ということはあります?
- 堂前
あると言えばありますけど。うちのチームでは今すぐ聞きたいということが、実はそんなにないんです。「いついつぐらいまでに返信くれればいいや」ぐらいの感覚なので、チャットで質問を投げておいて返事を待つという感じでやっています。
- 南
アトラエでは、ルールでぎゅうぎゅうに縛っても、いいものは生まれないと思っているので基本的に性善説を前提にしています。勤務時間中に眠くなれれば寝てもいいし、子どものお迎えがあるならその時間に合わせて帰ってもいいし、自分が夜型人間だったら少し朝を遅くする働き方にすればいいと思っています。それでチーム全体、会社全体のパフォーマンスが上がるんだったら…正直なんでもいいんです。
ビジョンの共有から信頼関係を構築していく
顔が見えない分お互いに認識がずれないための工夫をしているところはありますか?
- 堂前
共有認識として、タスクの期限はありますね。
- 紺谷
チーム内で、共通のスケジュールツールを使って管理してますね。そこにそれぞれの仕事の期限を設けて、毎朝全員でチェックしています。
朝、全員でチェックする時間がちゃんとあるんですね。
- 紺谷
そうです。朝にweb会議をやりますね。資料も全部クラウドで管理して、どこにいても資料が見れるようにしています。
紙は使わないですか?
- 紺谷
ほとんど使わないですね。
- 堂前
個々の業務だと使うことはもちろんあると思うんですけど、共有という意味では基本的に使ってないです。
紙を使わずにweb化するという形をつくらないと、なかなかリモートの文化は成立しづらいですよね。そこでつまずく会社さんもとても多いです。御社は最初からちゃんと体制ができていたからよりリモートしやすかったのかもしれないですね。
- 紺谷
特に我々の職種はどこにいても仕事ができますしね。それに、自分たちでも色々調べたりツールを活用したりしますね。
なるほど。
- 南
あと、子供の体調不良などで自宅作業しているときは、いつ仕事しているのか、いつ子供の看病しているのかわからないので、「今から子どもの病院に行くのに何分ぐらい席を外します」ってあらかじめチームに伝えておくことも多いですね。
宣言、大事ですね。
- 南
紺谷さんも「子どもの迎えに行ってきます」というのありますよね。
- 紺谷
「ちょっと抜けます」ってね。でも、リモートワークしてる側が言うのもなんですけど、みんなそんなに気にしてないと思います(笑)。
- 南
あぁ、そういえば気にしてないですね。(笑)
- 堂前
紺谷さんに関しては、僕もそんなに気にしてないですね。仕事がある程度一人で回せるようになると、その人に何かを任せてもこれはやってくれるんだろうなという信頼があるので、気にならなくなるんだと思います。逆に入ったばっかりでまだ信頼が築けていないメンバーだと、その人がどこでつまずくかや、どれくらいの速度で仕上げてくるのかも未知なので、コミュニケーションは多くとるかも知れないですね。
- 南
新卒は難しいかもしれないですね。
新卒の方も採ってらっしゃる?
- 南
毎年採ってますね。インターンの子ももちろんいますよ。新卒やインターンの場合は、まだまだ共通の認識や言語が少ないので、チャットツールで文字だけのやりとりよりだけではなく、ビデオチャットを繋いで直接話すことも大切にしていますね。
中途にしろ、新卒やインターンにしろ、後から入ってきた方をこの文化になじませるためにつまずくことや、気を付けてることはありますか?
- 南
最初は対面のコミュニケーションを大切にしていますね。テレワークと相反するんですけど、やっぱりテレワークを活用して、お仕事するためには土台が必要だと思うので。その人を理解したり、自分やチーム、アトラエ全体を理解してもらうのが大事だと思いますね。
最初のうちはオフィスに来てもらって、しばらく一緒にやって。
- 南
業務委託の方もそうですよね。
- 紺谷
目的がずれていなければ、初めからリモートワークでも大丈夫だと思うんですよね。アトラエでは、会社のビジョンがあって、それを達成するために「みんなそれぞれ考えてね」というスタンスなので、その方向一緒に向かっているという信頼を得ることができれば、新卒だろうがなんだろうが、リモートワークいくらやっても構わない。でも、リモートワークしたいんですという目的が先にきちゃうと、ちょっとうちとは合わないでしょうね。
社員それぞれの想いが壁に綴られていました。
- 堂前
本当にビジョンありきなんです。そこを理解しているというのが大前提で、みんな採用しています。
「社員の幸せ」が最重要事項
一連のお話を聞いていて、働き甲斐や働き方に対する考え方が面白いなと感じました。社員が長期にわたってイキイキと働くために有効な施策はどんどん取り入れていくというスタイルなんですね。他にも他社とは違う取り組みがありますか?
- 南
次の10月から本格的にスタートするんですけど、『サバティカル3』という制度があります。勤続年数が3年以上の人を対象に、3年ごとに1カ月間有給でお休みを「取ってください」というものです。
おお、新しい!
- 南
その期間は、子どもと過ごしてもいいし、海外に行くのもいいし、他の企業にインターンに行くのもいいし、何をやってもいいんです。リフレッシュ期間を設けることで、社員が長期にわたりエンゲージメント高く、イキイキと働き続けられることが導入の目的です。
海外に短期留学もできそうですね。
- 南
そうですね。うちの代表も、「若い頃あれだけ頑張ったからこそ、今の会社と今の自分があるけれど、もし20歳ぐらいのときにこういうのがあったら、海外へ行って、いろんな国のいろんなビジネスを見たかったな」と言ってましたね(笑)。それに、親の介護や留学などで会社を辞めるのは本当にもったいないと思っています。どちらも実現して、プライベートと仕事の相乗効果でその人の生活がよりよくなるのがベストだと考えています。アトラエでは、社員の幸せが重要なので、それが叶うならできるだけどんなことでも取り入れていきたいなという思いです。
長い休暇をお取りになったことはありますか?
- 堂前
僕はこれからですね。サバティカル3が始まってから。
- 紺谷
僕は取ったことあります。子供の小学校受験があったので、それに合わせて休暇のお願いをしました。妻が大学へ通っていたこともあってなかなか子供の為だけに時間を避けなかったので、僕が代わりに育児に専念させてもらいました。
保育園のお迎えへ行ったり、子供の勉強を見てあげたり、その期間は、子供としっかり向き合うことができました。
勉強を見てあげたんですか?
- 紺谷
そうです。塾に通わせたりしてました。小学校受験って親の力が重要なので、普通にやっていても間に合わないなと思って休みました。
制度がない時代からその辺りはやっぱり自由だったんですね。今後はサバティカル3でリフレッシュしたり、仕事とは違う領域のインプットを増やして、仕事や人生そのものに生かせればいいなというような考え方なんですよね。
- 南
アトラエは、クリエイティブな集団でいたいので、遊び心を忘れないでほしいなっていうのが一番ですね。どうぞみなさん自由に遊んで、自由に仕事してください(笑)。
- 一同
(笑)
アトラエの社員として「あるべき姿」とは?
- 堂前
人生って、プライベートと仕事がよく両極端に表現されますよね。「どっちを取るんだ!」みたいな。
そうですね。
- 堂前
でもね、僕はどっちも充実させればいいだけの話じゃないかと思っているんです。そのために1ヶ月休みが必要なんだったら取ってくれても全然いい。あ、でも、紺谷さんに「1ヶ月休みたい」って言われた時は「お、マジか」とは思いましたけどね(笑)。
やっぱり調整は必要になりますもんね。
- 堂前
そうなんです。それをするのが面倒だから「会社のために休まないでください」って言うのは簡単なんですけど、それって、お互いに何も生まないですよね。
- 紺谷
私も受け入れないし。そんなことを言われたら。
- 一同
(笑)
- 紺谷
絶対受け入れない。絶対休みますよ。アトラエの社員としてこうあるべきだと主張する。
- 一同
(笑)
その辺もう少しお聞かせ願えますか?「アトラエの社員として」の部分をぜひ。
社内のバースペース。自らシェイカーを振る方もいるそうです
- 紺谷
働きがいだけを求めるのであれば、うちの社員だってガツガツ働くんです。僕も含めて。でも会社内だけのコミュニティで終わってしまうのって、人として全然魅力ないと思いませんか?
そうですね。視野が狭くなりそうです。
- 紺谷
僕の場合は、会社の他にも、家族というコミュニティもありますから、そっちにもコミットするべきだし、他のメンバーにもいろいろなコミュニティがあると思うので、それぞれ全力でコミットするべきですよね。そうすることで人間としての面白みが膨らんでいくんじゃないのかなと思っています。だから、家族の事情で何かあれば「休ませてください」と言う。
- 南
でも、ちゃんと準備をしたんですよね。
- 紺谷
もちろん、さすがにそれは(笑)。いきなり仕事を放ったらかして「休みを取ります」は人として…。やることやってから休みました。
なんでも「やることはやって」という前提が皆さんきちんとあるから。
- 紺谷
そうですね。信頼もあります。
どこで働こうが、いつ働こうが関係ない、それだけの信頼関係があるというのはすごく素敵だと感じます。結果、「働きがいがある」という会社自体の魅力に繋がるんですね。トロフィーも獲得してらっしゃいましたし(Great Place to Workが発表する『働きがいのある会社』ランキング2017で、株式会社アトラエさんは6位に入賞しました)。
後編に続く
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この記事を書いた人
土佐光見
リモートワーク研究所研究員・ライター。
webショップの企画運営、web制作、ディスクリプションライティングを経験し、フリーランスに。リモートで働く二児の母。趣味は読書、観劇、俳句。