(最終更新 2018/08/14)
日本ではまだまだリモートワークについて書かれた書籍は多くありません。そこでリモートワークラボでは、海外で出版されている書籍の中から、リモートワークを実践するにあたって参考になりそうな書籍を選んで、研究員が読破し感想とともにご紹介しています。ぜひご参考に。
概要
著者のDavid Rockさんは神経科学(Neuroscience)の観点からリーダーシップ(Leadership)を研究する学問分野である「Neuroleadership」の権威です。この本の中でも脳や神経の観点から、仕事をより効率よくする方法を説いています。
構成としては、大企業の中で最近昇進したばかりのEmilyと、自宅でコンサルティング業を営むPaulの日々の仕事上でのトラブルが物語調展開し、その後、David Rockがそのトラブルを脳科学、神経科学を使いながら解説し、二人はどうすればいいのか提案していくというスタイルです。
例えば「リモートワークでは怠けてしまう、集中できなくて効率が低下する」という不安について。リモートワークをしているPaulが、近くにある冷蔵庫や妻からの電話が気になって作業が進まない、というシーンがあります。これはリモートワーク特有の現象かと思われがちですが、実はメールの通知なども同じ効果を持っています。人間の脳は通知(音)に敏感にできており、その能力は進化の過程で生き延びるために備わったものなのだそう。その反応を無理に抑えようとして、集中したり、意思を強く持ち続けると、脳のリソースを大きく消費することになり、消費しきってしまうと結局集中できなくなるのです。
リモート、オフィスに関わらず、気になるものや事象をあらかじめ影響しないようにを排除してしまうのが効果的と言えるでしょう。
この本の主題がリモートワークというわけではないので、リモートワークに関連するところは多くはありません。しかし、脳科学、神経科学という少し難しそうな分野の話がいかに私たちの生活に関わっているかをわかりやすく解説しているのでとてもスムーズに読みすすめることができます。
感想
概要には、「この本はリモートワークが主題ではない」と書きましたが、この本に出てくる問題は、リモートワークをしていく上でもよく出てくるものです。私もリモートワークを初めて約半年になりますが、よく周囲の人に「リモートワークだと○○が問題になるんじゃないの?」と聞かれます。この本を読んで強く感じたのは、「その問題は本当にリモートワークが原因なのか?」と考えることの重要性です。
例えば「リモートワークだと社員がちゃんと働いているか見えないから不安だ」「オフィスの外で働くと邪魔が多いから効率が下がる」などといった問題は本当にリモートワークが原因なのでしょうか?リモートワークをやめて全員オフィスで働いたら社員の勤務内容が見えるのでしょうか?オフィスで働くと邪魔が無くなるのでしょうか?確かに、リモートワークが原因で発生している問題もあるかもしれません。ただ、そうでない問題も、しっかり考える前に「リモートワークが原因だ」と決めつけてしまっている事例をよく耳にします。
この本では、本当は別のところに原因があるのに、「リモートワークが原因で起きている」と勘違いされている問題とその対処法が紹介されており、多くの解決法は個人で実行可能なものです。リモートワークをやっているけどうまくいかないという方や、リモートワークなんて私にはできないと考えている方におすすめです。
プロフィール
野本 司(のもと つかさ)
リモートワーク研究所研究員。大学時代にアメリカとスウェーデンでの留学を経験後、2017年4月にソニックガーデンに入社。入社前のインターンシップから現在まで、ずっとリモートワークをしている。世界各地を移住しながら働く生活スタイルに憧れがあり、現在計画進行中。趣味は旅行、プログラミング、野球。